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ハノイには午後2時過ぎに着いた。 カンボジア・ボーダーから私はずっとシン・カフェ(旅行会社)のツーリスト・バスを利用してきた。シン・カフェのツーリスト・バスは目的地に着くと提携しているゲスト・ハウスの前に停まるのだが、私は結局どこも泊まらなかった。意地悪をしているわけではなく、他に泊まりたい宿があっただけだ。旅行会社泣かせである。 ハノイでも荷物を受け取ると踵を返すように歩き始め、やはり前に泊まった『BAO LONG HOTEL』に行った。 中に入るとスタッフが懐かしそうな顔をした。そして日本語で「お帰り」と言ってくれたのだ。2年振りにふらりと現れた気まぐれな旅人を「お帰り」と言って迎えてくれた。嬉しかった。
2年前の散歩コースを歩いて、行き付けの店を巡ってみた。まずは大使館街にある小さなカフェに入っていった。人が変わったようだ。そして、カフェ・ス・ダー(アイス・ミルクコーヒー)を注文した。 出てきたコーヒーを見るとなぜか泡立っている。嫌な予感は的中した。インスタントだった。 私はコーヒーに詳しくはないが、ベトナム・コーヒーは世界一美味いと思っている。それがなぜインスタントに…。ショックだった。それからこの店では苺茶を飲むことにした。これもティー・バッグだったが美味かった。 後の行き付けはことごとくなくなっていた。お婆ちゃんのサンドイッチ屋、Lonely Planet Cafe…。少し寂しかった。
同じ宿にはニャチャンから一緒だった齊藤君がいた。そして、他の宿からやはりニャチャンで出会ったミナコさんたちが遊びにきてくれ、食事に出かけた。齊藤君に教えてもらったレストランは米飯がとても美味かった。そのうえ安い。ここが新しく行き付けとなった。
NGOC DUON HOTELにも日本人が多かった。私はここで毎日コーヒーを飲んでいた。他の店より少々高かったが、なんとなく居心地がよく通ってしまった。スタッフも感じがいい。 しばらく通っていると、オーナーの奥さんが私を見たことがあるという。そして「ANH SINHに泊まったことない?」と聞いてきた。 ANH SINHはかつての日本人宿で3年前の夏に1泊だけ泊まったことがあった。実はここのオーナーはANH SINHが日本人宿だった頃のオーナーだったのだ。オーナーが変わってからのANH SINHはトラブルが多く評判はがた落ち、常連客は次々とNGOC DUON HOTELに移ってきていた。かつてのオーナーもそれを嘆いていた。人は名前ではなく人に集まるものだ。3年前に1泊しただけの私を憶えていてくれた。そんな人柄に皆集まるのだ。
中国ビザを受け取ったその日の夜、ハノイを発つことにした。 出発前、私と入れ違いでBAO LONG HOTELに移ってきたミナコさんとNGOC DUON HOTELにいった。コーヒーをサービスで1杯余分にくれた。 最後に握手をして暖かく見送ってくれた。 今度来るときはBAO LONGに泊まろうか、NGOC DUONにしようか。嬉しい悩みである。 |
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