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成都の西門バスターミナルでは久しぶりに外国人料金に出くわした。 成都からバスで約9時間。チベット高原の東端に位置する四川省のアバ州にある松潘に到着した。 バスを降りると客引きに混じって一人の日本人旅行者がいた。彼は甲斐さんといい、たまたま訪れたこの場所が気に入って、もう数ヵ月滞在しているという。
彼の案内で松州賓館にチェック・インした。そのあと、彼は行きつけの旅行会社、食堂、街中などを案内してくれた。彼について行くとたちまち息が切れた。松潘は標高2,730mだが、500mの成都から一気に来たせいか、すぐに息があがる。おまけにホテルの部屋が3階にあるため、階段を上るのも重労働だ。 そのうち頭痛などの高山病の症状も出てきた。パキスタンでは標高4,000mの山でも平気だったのに、緑の多い山中と街中ではやはり違うのか。初日は少しおとなしくしていることにした。
翌日症状はだいぶ軽くなった。 この日も甲斐さんの案内で街中を歩き回った。松潘には主に漢族、回族、チベタンが住んでいて、チベタンの土産物屋などが多い。 甲斐さんには行きつけの旅行会社と食堂があった。この2軒は隣り合っていて、同じ経営のようだ。 ここには旅行会社の客引き担当の漢族の娘、食堂の回族の若女将、店員のチベタンの娘がいた。3人ともいつもテンションが高い。私も大半をここで過ごした。 3人揃うととても賑やかだ。他民族同士がこれほど仲が良い中国人は見たことがない。まさに三民族最強タッグだ。 女将は私の持っていた中国語会話集を見て、日本語を教えて欲しいと言ってきた。日常会話からなぜか「頭が痛い時は薬を飲まなければなりません」まで、必死にというよりも楽しそうに覚えていった。私も遊び心を出して「很高興」を「超ウレシイ」と教えた。
松潘の目玉はホース・トレッキングだ。馬、ガイド、食事、宿泊込みで1日60元(約7.5US$)と安い。1泊2日で120元、2泊3日で180元というわけだ。私は日帰りで一山向こうのチベタンの村に行くトレッキングをアレンジしてもらった。 私は白い馬に乗ることになった。乗馬などしたことはなかったが、良く躾られた馬はおとなしく私を乗せてくれた。 ガイドの乗った茶色の馬が前を歩き、私を乗せた白い馬がその後に続いた。始めは素直だった馬も、やはり私を素人と見たのか、よく立ち止まっては道端の草を食べていた。「道草を食う」とはここから来ているのだろうか。 その後も白馬はヤマネコ・ストを繰り返しながらも進んでいった。
山をひとつ越えるとそこにはまるで別世界のようなチベットの世界が広がっていた。タルチョ(祈祷旗)が無数になびき、ストゥーパ(仏塔)が眼下に広がる。 到着してすぐにガイドは食事の用意を始めた。ところが、あろうことか包丁を忘れてきたという。私も刃物は持っていない。すると、ガイドはジャガイモをコンクリートの角にぶつけて手で割り始めた。まぁ、火を通すからいいかと割り切るしかなかった。 食事ができるまでの間、小さな寺がひとつあるだけの集落を散歩した。あまり動くと息が切れるので、少し歩いては休んだ。寺には何人かのチベタンがマニ車を回しながら、祈りの言葉を唱えている。 食事はうどんだった。中国らしく大量に作る。食べ残しは馬が食べた。馬もうどんを食べるのだ。 食事が終わると帰路についた。ますます、馬がサボる。 日本ではまだあまり知られていない松潘だが、予想以上に楽しいところだった。中国は、いや旅はまだまだ奥が深そうだ。 ちなみに松潘にある『パンケーキ・ハウス』という店のチョコレート・パンケーキは最高だった。 |
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