Go Go Heaven!

─天空の国への91時間半─

中国:ゴルムド〜ラサ(2000年8月8日〜8月13日)



ゴルムド〜ラサ間は中国国内からチベット自治区へ陸路で入域することが認められている唯一の区間だ。しかし、中国国際旅行社(CITS)でツアーの形式をとって手配しなければならない。その値段1,660元(約202.5US$。片道は無い。中国人なら同じ区間を同じバスで170元(約20.7US$)だ。

もうひとつの方法がある。CITSを通さずに直接又は間接的にバスのスタッフと交渉してチケットを買う方法だ。いわゆる“闇バス”である。

闇バスを使う旅行者は決して少なくない“安心”を買うために100US$以上の金額は大き過ぎる。

ラサ行きのバスは駅前バスターミナルと西蔵バスターミナルから出る。市場調査のためこれから交渉に行くという人たちに同行した。

交渉は大体1,000元(約122US$)から始まる。この時期は相場が高く600〜700元だった「目立つから茶髪は乗せない」と断られる人もいた。思ったより重労働のようだ。

 

翌日は私たちが交渉する番だ。初めに駅前ターミナルへ行ってみた。700元から一向に下がらない。今度は西蔵バスターミナルへ行ってみる。こちらは600元まで下がった。ラサまで辿り着けなかったら全額返金を条件に乗ることにした。

公安の目を避けるためバスが来るまで近くのホテルの一室で待機。

数時間後、やっと1台の寝台バスが来た。私たちは最後部にまわされ、運転手も通路に臨時のベッドを作るなどして視角に入るように工夫してくれた。

バスは順調に走り出した。そして数時間後、バスが止まる。検問のようだ。運転手の制止を振り切って公安が乗り込んできた。私たちは毛布をかぶる。しかし、あえなく見つかってしまった。バスの中でパスポートを回収される。運転手がやって来てすまなそうに金を返してくれた(後で数えてみたら、若干少なかった

バスを降りるとさっきパスポートを回収した公安がいない。まさか、パスポートを盗まれたのか? 皆に不安がよぎる。


検問の詰所。全く緊張感がない
(モザイクをかけたら怪しくなってしまった…)

しばらくしてその公安が出てきた「パスポートを返せ」という抗議にしばらくは聞こえない振りをしていたが、ほどなく返してくれた。ちょっとした脅しのようだった。

それからは公安たちも威圧的な態度をとるわけでもなく、時折笑顔さえ見せた。

詰所で待つこと3時間、私たちは反対方向から来たタクシーに詰め込まれ、ゴルムドに“強制送還”された。すでに午前3時を回っており、ホテルも閉まっている。仕方が無く私たちはホテルの前で寝袋を敷いて一夜を過ごすこととなった。

 

1度の失敗でめげる輩ではなかった。翌朝早速駅前ターミナルへ行った。私たちより先に駅前ターミナルから行った人たちが戻って来ていなかったので、きっと検問を突破したのだろう。そこに賭けた。値段はやはり700元だった。


私たちを乗せたバス。
食事休憩のとき、虹が出迎えてくれた

バスは1830分に発車した。しかし、すぐに修理工場へ。バスの調子が悪いらしい。工場を出てからも何度となく停車しては修理していた。

そして深夜、昨日の検問に着く。またしても公安が乗り込んできた。そして、また見つかった。運転手が「彼等は少数民族だ」などと言ってくれているが、昨日捕まっているのですっかりバレている。しかし、今度の黒幕はなかなか頑張っている。しばらくして公安が降りて行き、バスはUターンしていった。車内の中国人たちの怒声が飛び交う「なぜ引き返すんだ!」「ラサに行け!」「外国人など降ろしてしまえ!。肩身が狭くなる。

検問から数km離れたところでバスは止まった。そして、30程待機して再び検問のほうへ向かった。バスが検問に着く。ところが今度はすぐ発車した。カーテンの隙間から覗くと検問がみるみる遠ざかって行く。突破した! 暗い車内で私たちはハイ・タッチして喜び合った。

 


氷河で覆われた山が見える

検問は突破したがバスの故障は相変わらずだった。止まっている時間のほうが長い。そのお蔭で高地順応でき、高山病の症状は出なかった。しかし、休憩でバスを乗り降りすると息が切れる。呼吸を整えて水を飲むと、その水を飲む僅かの間呼吸を止めるのでさえ死ぬほど苦しい。

3日目にやっとチベット自治区に入り、ナクチェに到着した。普通ならここから6時間でラサに着く。この時間ではラサ到着は深夜か? そんな心配は無用だった。その後もバスは故障を繰り返し何度も停車した。

 


雲が近づいてきた

翌日、運転手の一人が私たちのもとにやって来て「ゴルムドの検問で2,000元の賄賂を払った。次の検問でまた賄賂を払ったら採算が合わない。悪いがあと一人100元づつ払ってくれないか」という。これは私たちもあらかじめ考えていた。ラサの手前で追い返されたのではたまらない。100元で何とかなるなら払おう。

しかし、バスは一向に検問に着かない。やがて大きな町が見えてきた。ラサだ。運転手は検問を迂回したのだ。

ラサのバスターミナル到着後「検問を通らなかったのならさっきの100元は返せ!」と猛抗議したが、闇の世界に約束はない。諦めざるを得なかった。

しかし、私たちは遂に天空の国ラサにやって来たのだ。

到着したのは4日目の14時。所要時間91時間半。


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